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須田記念 視覚の現場 第4号【予告】


特 集
「パンデミックと美術」について

B5判
2021年2月発行予定
発行者 一般財団法人きょうと視覚文化振興財団

「須田記念 視覚の現場」
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【特集「パンデミックと美術」について】
2019年末、中国武漢に発した新型コロナウィルス感染症のパンデミックによって、とつぜん世界は違った相貌を見せ、これまで築かれてきた「文明」が転換せざるを得ないような局面に立たされています。パンデミック下では、生身の人間の肉声や身振りによる表現である演劇、舞踊、音楽の活動が最も制限を受けて難渋し、また生身の人間が感動を共有する場である劇場・映画館や美術館・ギャラリーも、何らかの制限を受けざるを得ません。代わって擡頭したのが、ネット配信による制作・発表・享受の一貫した過程を有する表現スタイルであり、こうした動向は情報通信技術の飛躍的な「進化」とも相俟って、パンデミック後の視覚文化に新たな課題を突きつけているといえましょう。
須田国太郎とパンデミック……。およそ縁遠きことに見えますが、須田が生涯にただ一度欧州に滞在し、その後の画業の糧としたのは、「スペイン風邪」インフルエンザの猛威冷めやらぬ100年前のマドリッドでした。その名とは裏腹に、アメリカ発祥らしいインフルエンザのパンデミックは、須田が留学準備中の京都・近畿地方にも来襲して、数万人の死者を出しましたし、欧州航路も第一次世界大戦とパンデミックの影響で直航便がなく、移動に4か月を要しました。しかしこの困難に耐えてたどりついたプラド美術館に沈潜し、巨匠たちの絵画に直面した経験が、後年の大きな稔りを準備したのでしょう。
パンデミック下の社会は、死への個人的恐怖に支配され、見えない敵への漠然たる不安に苛まれて分断を生み、とりわけ都市において社会活動の停滞と人間の孤立化をもたらしました。しかし、そうした災厄の時期を乗り越えたパンデミック後の活力よみがえる社会が、旧来の文明を一新する新たな芸術表現を生み出したことは、14世紀後半の「黒死病」ペスト後のルネサンス(クワトロチェント期)や、100年前の「スペイン風邪」インフルエンザ大流行を経た欧州の、いわゆる戦間期芸術文化においても見られるところでしょう。また、古くは8世紀のわが国における天然痘大流行と大仏建立など天平文化との関係にも、関心が向かいます。
本特集ではおおむね下記のテーマで、大学・美術館の研究者や運営担当者の方々に執筆していただきました。
  ・
パンデミックと美術の歴史的検証・分析。
  ・
現在の新型コロナウィルス感染症パンデミック下における芸術文化の現状に対する批判的検証。
  ・
新型コロナウィルス感染症パンデミック後の芸術文化の展望。
  ・
視覚文化の制作現場ならびに美術館・ギャラリー運営の場での、新しい発見や提案。
対象分野は多岐にわたりますが、それぞれの論考がパンデミック後の美術を開扉・展望するための、貴重な鍵となることを期待しております。 

責任編集 熊田司
(きょうと視覚文化振興財団評議員)



2021年2月の刊行に向けて、編集作業中です。
須田作品に加え、特集図版も多数掲載予定です。ご期待ください。