視覚文化連続講座シリーズ2
第3回「視覚文化を横断する」
講座レポート
「近代」を輸入する
-ロンドンの吉澤商店-
笹川慶子
(関西大学教授)
日時:2021年11月20日(土曜)午後2時から3時30分
会場:平安女学院大学京都キャンパス
主催:きょうと視覚文化振興財団 京都新聞社
協力:平安女学院 京都新聞総合研究所
連続講座第3回は、笹川慶子先生のご講演でした。笹川先生は、アメリカ合衆国から世界に広がったハリウッド映画の研究から映画研究に入られ、その後に、世界各国における映画文化の流通を研究テーマにされてこられました。とりわけ、日本における映画受容のあり方について、アメリカ、イギリス、フランス、そして中国などの動向を調査され、映画産業の国際的な拡大について新しい学説を唱えられています。
世界における映画の上映は、1890年代に始まりますが、今回は、1903年に東京の浅草電気館を会場にして映画を上映した日本の吉澤商店について、その発端、展開、発展の歴史を詳細にお話しいただきました。この時期、アジアではシンガポール、香港、上海、マニラなどでも映画の上映が始まり、映画産業は急速に国際化していきます。1908年には吉澤商店が、最初の映画製作所を設置し、やがてロンドンに進出して、フランスを始めとする欧米の映画フィルムを購入して日本に輸入するようになりました。英国貨幣のポンドを手に入れるため、吉澤商店は日本の浮世絵を現地で売って資金を稼いだそうです。
日本の映画産業における草創期の映画会社としては、東京の吉澤商店、Mパテ商会(東京)、横田商会(京都)、福宝堂(東京)の4社が有力でした。しかし、1912年に大日本フィルム機械製造会社(後の日本活動写真会社で、略称が日活)がこれら4つの映画会社を買収し、映画産業は新たな展開を迎えることになります。こうした日本における映画産業の展開について笹川先生は、吉澤商店の河浦謙一、立島清、栗本瀬兵衛、およびMパテ商会の梅屋庄吉らの海外での活動を丹念に追跡し、20世紀初頭の日本のみならず、欧米における映画流通の歴史をお話しされました。
ご講演は、笹川先生のイギリスを始めとする海外での調査活動のご苦労なども交えて、詳細かつ具体的なお話となり、講座は大きな盛り上がりを見せたと思います。(N)