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視覚文化連続講座シリーズ2 
第6回「視覚文化を横断する」
講座レポート

歴史を刻む見出し

-「あの日」の記憶を共有する-

林屋 祐子
(京都新聞社メディア局)

日時:2022年2月19日(土曜)午後2時から3時30分
会場:平安女学院大学京都キャンパス
主催:きょうと視覚文化振興財団 京都新聞社
協力:平安女学院 京都新聞総合研究所
連続講座第6回目は林屋祐子先生のご講義でした。12年間、京都新聞に内勤の記者として勤められた経験を踏まえて、新聞紙面の構成とデザインおよび「見出し」のつくり方についてお話しされました。過去の事実に即したお話しは、分かりやすく説得力があり、受講生の興味を惹きつけたようです。
今回のご講義では、新聞紙面で重要な役割を果たしている見出しを中心に、お話しが進められました。大きな紙面の中から一目でニュースの重大さを伝えたり、読者に読みたいという気持ちを起こさせたりするのが、見出しです。その見出しの文章を考えたり、文字やデザインを考えたりするのは、取材であちこちを廻って原稿を書く外勤の記者ではなく、内勤の記者、つまり「整理記者」と呼ばれる人たちだそうです。内勤の記者は、外勤の記者が書いてくる原稿の中から、どの原稿を活字化するか、どのような見出しの文章にするか、どのような写真を使うか、そして、紙面全体を視野に入れて、どのようにレイアウトするかも考えます。すなわち、その文章を、どの場所に、どのような大きさで、どの種類の、どの大きさの活字を使って、どのような背景のもとで提示するのか、などなどです。
講義では、2011年に発生した東日本大震災の記事について解説がなされ、続いてノーベル賞をとった真鍋淑郎さん、在職中に亡くなった大平正芳首相の訃報記事、また、1980年に狙撃されて死亡したビートルズのジョン・レノンの死亡記事などの内容について語られました。とりわけ訃報記事の見出しは、その人物の生涯の最後の輝きをまとめるものとして、内勤記者の腕の見せどころだということです。
こうした死亡記事の実例として、瀬戸内寂聴、司馬遼太郎、石原慎太郎、手塚治虫、黒澤明、渥美清らの名前が挙げられました。死亡記事では、主見出しのそばの副見出しを考えねばなりませんが、それをつくるのが最も難しい人物は、女優の樹木希林だったそうです。映画やテレビドラマで常に脇役を演じた彼女については、主役ではないため、出演した作品名を使うのが難しく、記者たちは困難に直面したということです。
林屋先生の新聞紙面に関するご講義から、新聞紙面には、人々の心に訴える「事実の重さ」を伝え、歴史の記録を残すという大きな価値があるということを学びました。(N)



【会場の様子】
受講生にとって身近な新聞が今日のテーマです。スクリーンに映されているのは、1980年に狙撃されたジョン・レノンの死亡記事。40年以上前の出来事が、受講生の記憶の中から蘇ります。

スクリーンに映された紙面のアップ。黒ベタ白抜きの主見出しは「ヨーコさんの目前で惨劇」と読めます。この記事は、いわゆる「三面」のトップ記事として、大きく掲載するとともに、隣の紙面にもはみ出させ、両側を太い罫(けい)で挟むことによって、事件の衝撃の大きさを表現しています。

講義が終わり、質問の時間となりました。マイクを手に質問されているのは、新聞の愛好家。それにしても、この日の会場は、ことのほか寒かったようで、質問の方は、毛糸の帽子と襟巻き着用で、対策は万全。たしかに、皆さん、寒そうです。コロナ対策のために換気が必要とはいえ、なんとかしなくちゃ。

【連絡先】

きょうと視覚文化振興財団事務局

〒611-0033 宇治市大久保町上ノ山51-35
Tel / Fax:0774-45-5511