【内容】
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- 川嶋啓子/京都の染織地盤、現在のテキスタルアートの現場
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- 野田凉美/自分と学生の作品を通じてみる京都の染織教育と未来
【報告】
今回ご講義の川嶋先生は、京都市内で画廊を経営されてこられ、数多くの作家たち、とりわけ染織・テキスタイル分野のアーティストと交流されてこられました。また、野田先生は、作家活動と並行して、種々のテキスタルを専門とする教育機関で若手作家や学生たちを指導してこられました。お二人とも、ヨーロッパや中国でも展覧会に招待されたり、斬新な企画を実施するなど、国際的な活動を続けてこられました。今回のご講義は、主として1970年代以降のテキスタルアートの世界で活躍した小林正和をはじめとして、近年、活動している若手作家にいたるまでの数多くの作家と作品について詳しく紹介されました。
まず、川嶋先生が、テキスタルデザインの領域で大きな成果を上げ、その後に続く作家たちに決定的な影響を与えた小林正和(1944-2004)についてお話をされました。小林は京都市に生まれ、京都市立芸術大学で学び、川島織物デザイン部に就職して、伝統的な染織の枠を越えて「ファイバーアート」と呼ばれる新しい分野を開拓し、国際的な評価を得ることになります。
そうした環境の中から、小名木陽一、吉村正郎、上野真知子、村山順子らのテキスタイルアーティストが誕生したということです。野田先生は、彼らを含めた国際企画展の内容についても、興味深い紹介をされ、受講生にとっては「目からうろこが落ちる」講義となりました。その内容は、展覧会企画のあり方や、素材についての詳細な解説、染織技術のさまざまな種類など、多岐にわたりていねいな講義であったと感じました。
また、野田先生は、テキスタイルスクールで学生たちを育てる活動に力を入れてこられましたが、その苦労と現状について現場の経験を踏まえたお話しをされました。最後に、染織・テキスタイル分野の未来について熱っぽく語られ、好評のうちに講義を終えられました。(N)