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視覚文化連続講座シリーズⅠ 第7回「視覚の文化地図」講座レポート 

過去による治癒

-鉄道/観光広告のなかのキョウト-

佐藤守弘
(同志社大学教授)

日時:2021年3月28日(日曜)午後2時から3時30分
会場:平安女学院大学京都キャンパス
主催:きょうと視覚文化振興財団 京都新聞社
協力:平安女学院 京都新聞総合研究所
視覚文化連続講座シリーズⅠの第5回と第6回は、コロナ禍のため、それぞれ、5月15日(土曜)と6月19日(土曜)に順延となりました。というわけで、今回は、当初予定の第7回です。あいにくの雨でしたが、平安女学院の見事な紅枝垂れ桜が、受講生を出迎えてくれました。

【要旨】
京都への旅行を宣伝する鉄道や観光広告の中には、めまぐるしく動く現代の都市生活に疲れた人の心身を癒す場所として京都を表すものがよく見られます。このような語りのパターンは、どのように生まれてきたのでしょうか。本講演では、東京遷都直後の京都についての語り方や、戦後の流行歌、そして1970年代以降の広告などをひもとくことによって、「キョウト」という場所が、どのように想像されてきたのかを考えていきたいと思います。

【目次】
はじめに
1, 現実の京都、語られるキョウト
2,「そうだ 京都、行こう。」の物語
3, 現在の東京/過去の西京̶̶近代日本のふたつの顔
4, 京都・おんな・一人旅̶̶歌われるキョウト
5,「ディスカバー・ジャパン」と故郷の再発見

【会場の様子】
いつも通り、会場は、コロナのことを考慮して、密にならないように、ゆったり。ひとつの机に、ひとりずつ。今回は、この会場に、デューク・エイセスの「♪きょーとー、おーはら、さんぜんいん」が流れました。タイトルは『女ひとり』で、何度も耳にしたことがあるのですが、歌詞の中に「結城に塩瀬の素描の帯が池の水面にゆれていた」という部分があることを発見。こんなのあったっけ。なんだ、難しい。早速調べてみました。「結城」が「結城紬」という高級絹織物の着物であることは分かるのですが、「塩瀬」をチェック。小学館『日本国語大辞典』には「羽二重(はぶたえ)風の厚地の織物。細い生糸を密に配列して経(たていと)とし、太い生糸を緯(よこいと)として、平織にしたもので、多く横畝(うね)がある。織りあげた後、精練・染色などの加工をするため、博多織と異なり、しなやかである。帯地・袱紗・羽織地などに用いられる。塩瀬羽二重、紋塩瀬などがある」とあります。着物関係は不勉強で恥ずかしいのですが、なんで、この織物を「塩瀬」と呼ぶのかが分からず、ネットを検索していると、なんとこの織物が、創業660年を誇る銘菓「塩瀬饅頭」と密接な関係があることが分かり、びっくり。天正年間(1573-1592)、烏丸三条で饅頭屋を営んでいた塩瀬家の宗味は茶を好み、利休の孫娘を娶って、饅頭屋の稼業のかたわら、一族に縁のある三河国設楽郡塩瀬村(現・愛知県新城市)で織られた羽二重で作った茶巾・帛紗の商いをしたことから、この種の絹織物を「塩瀬」と呼ぶようになったとのことです。したがって、「塩瀬の素描の帯」というのは、塩瀬の生地に手書きの友禅染で柄を表した帯のこと。どんな絵柄かは分かりませんが、この帯を締めた「恋に疲れた女」は、落ち着いた大人の趣味を持つ女性のようですねえ。そう言えば、2番の歌詞で、この女性は「大島つむぎにつづれの帯」、3番の歌詞では「塩瀬がすりに名古屋帯」を締めています。和装音痴にはよく分かりませんが、ひょっとすると、この女性は、30代の後半から40代はじめではないか、と勝手に想像する今日この頃です。

【講師の佐藤守弘さん】
講師の佐藤守弘さんは、京都っ子。うん? 「江戸っ子」とは言いますが、「きょうとっこ」と言いますかねえ。ともあれ、京都にはめっぽう詳しい。とはいえ、『女ひとり』は、昭和40年(1965)にリリースされた、いわゆる京都の「ご当地ソング」。佐藤さんは1966年生まれのようですので、「おぎゃー」と生まれた時に最初に耳にした歌謡曲が、この曲であった可能性は排除しきれませんねえ。ただ、佐藤さんのお話の中にもありましたが、当時は、まだ、女性がひとりで旅をすることが稀な時代であったようですので、件の「恋に疲れた女性」は、京都にやって来た人というよりも、京都に住んでいる人ではないか、とも思う今日この頃です。いずれにしても、佐藤さんは声がデカい。くれぐれもノドの調子にご用心、ご用心。


  • いつも通り、会場は、コロナのことを考慮して、密にならないように、ゆったり。


  • 佐藤さんは声がデカい。くれぐれもノドの調子にご用心、ご用心。

【連絡先】

きょうと視覚文化振興財団事務局

〒611-0033 宇治市大久保町上ノ山51-35
TEL / FAX  0774-45-5511
Mail / info@kyoto-shikakubunka.com