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視覚文化連続講座シリーズⅠ 第8回「視覚の文化地図」講座レポート 

テレビCMのレトリック

-旅への誘惑-

岸文和
(同志社大学名誉教授)

日時:2021年4月17日(土曜)午後2時から3時30分
会場:平安女学院大学京都キャンパス
主催:きょうと視覚文化振興財団 京都新聞社
協力:平安女学院 京都新聞総合研究所
視覚文化連続講座シリーズⅠの第5回と第6回は、コロナ禍のため、それぞれ、7月17日(土曜)と6月19日(土曜)に順延となりました。というわけで、今回は、当初予定の第8回です。今回も、あいにくの雨。平安女学院の葉桜も、雨音を聞いていました。

【要旨】
テレビCMは、企業や団体が、視聴者に対して、特定の商品/サービスを魅力的に表現することによって、購入/利用するように勧めるために制作されます。では、国鉄やJR東海のテレビCMは、鉄道による旅客輸送を、どのような魅力のあるサービスとして表現するために、どのような映像上の工夫をしたのでしょうか。CMのレトリックや物語に注目して、このことについて考えてみます。

【目次】
はじめに
1)レトリックの定義
2)キャッチコピー
3)視覚的レトリック(比喩)の分類
4)物語の構造論(ダンダス・モデル)
5)変化(変身)=物語の3類型
6)物語の構造論(グレマス・モデル)
 聖杯伝説
 G.プリンス・修正モデル
 国鉄《ディスカバー・ジャパン》
 JR東海《ハックルベリー・エクスプレス》
 JR東海《クリスマス・エクスプレス》


【会場の様子】
「三密」を避けるために、皆さんには、換気のいい、大きな教室で、ゆったりと座っていただいています。正面にはパワーポイントの画面。拡大してみると「レトリックの定義」と書かれているのが見えます。今回のテーマは、「テレビCMのレトリック」なので、「レトリック」について説明するというわけです。重要なことは、この言い方が比喩的であるということです。というのも、「レトリック」というのは、本来、「ことばを巧みに用いて美しく効果的に表現すること。また、その技術」(小学館『日本国語大辞典』)と定義されるのですが、テレビCMについては、キャッチコピーという言語的な領域だけではなく、視覚的/映像的な領域にも、この概念が拡張的に使用されているからです。ということで、テレビCMのレトリックについては、「商品の魅力を効果的に伝達する(注目させる/関心を持たせる/欲しいと思わせる/記憶させる/押しつけがましくなくする)ための言語的・視覚的な工夫」と定義して、話が進められました。。

【講師の岸文和さん】
今回の講師は岸文和さん。いつもは、マイクを持ってあちこち歩きまわり、受講している方々のご意見を伺いながら話を進めるというスタイルなのですが、コロナのせいで、さすがに無理。一方的にしゃべらないといけないので、ストレスが溜まっているようです。さて、スクリーンには、杉浦非水の描いた三越呉服店のポスター《春の新柄陳列会》(1914年[大正3]、愛媛県美術館蔵)が映されています。ことばの修辞学から、テレビCM(動画)のレトリックへと話が進む過程で、ポスターという広告用図像(静止画)の視覚的レトリック――視覚的・造形的な工夫/仕掛――を、大衆消費社会が幕開けした大正時代に制作された日本のポスターの代表作を手がかりにして、概観しておこうというわけです。視覚的なレトリックと一口に言っても、多様な種類がありますが、代表的なものと言えば、直喩、隠喩、活輸(擬人法)、換喩でしょう。そのような観点からすると、このポスターには、2種類のレトリックが使用されていることになります。すなわち、ひとつは、百貨店で販売されている最新の商品に関心を寄せる若い未婚の女性を、チューリップをはじめとする花々の間を舞い遊ぶ蝶々(着物に伏蝶の柄がある)に見立てる「隠喩」というレトリック。もうひとつは、若い未婚女性を美しく、魅力的に描くことによって、その美しさと魅力の原因である三越呉服店の商品(呉服/服飾品/調度/生花)のすばらしさをアピールする「換喩」というレトリックです。「換喩法」というのは、一般的に、「ある事物を表現するのに、それと深い縁故のあるもので置きかえる法。角帽で大学生を、鳥居で神社を、弓矢の道で武道を表わすなどの類」(小学館『日本国語大辞典』)と定義されます。たしかに、このポスターに、「置き換え」があるわけではありません。しかし、このポスターは、商品のすばらしさを表現するのに、商品によって美しく変身した若い女性のすばらしさを強調する(この種のポスターは美人画ポスターと呼ばれていた)という点で、レトリックを使用していると考えたいわけです。この種の「換喩」は、現在でも、ポスターの常套手段ですねえ。


  • 「三密」を避けるために、皆さんには、換気のいい、大きな教室で、ゆったりと座っていただいています。


  • いつもは、マイクを持ってあちこち歩きまわり、受講している方々のご意見を伺いながら話を進めるというスタイルなのですが、コロナのせいで、さすがに無理。

【連絡先】

きょうと視覚文化振興財団事務局

〒611-0033 宇治市大久保町上ノ山51-35
TEL / FAX  0774-45-5511
Mail / info@kyoto-shikakubunka.com