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視覚文化

視覚文化(visual culture)とは何か

「視覚文化」とは、文字通り視覚に訴える文化、あるいは視覚が捉える文化のことで、いわゆる「美術」よりもはるかに範囲が広く、価値的にも、領域的にも、また、機能的にも多様なものを含んでいます。「価値的に多様」というのは、マンガやアニメなど、これまでサブ・カルチャーやマス・カルチャーとして、絵画や彫刻など、ハイ・カルチャーの下位に位置づけられてきたものを含んでいるからです。「領域的に多様」というのは、建築やファッションなどの物理的なモノや、版画やグラフィックデザインなどの画像、また、映画や写真などのアナログ/デジタル映像、お茶や芸能などのイベント的なものなども包摂しているからです。「機能的に多様」というのは、いわゆる「美術」など、もっぱら美的な観賞のために使用されるものだけではなく、テレビゲームやプロジェクション・マッピングなど、娯楽やエンタテインメントの用に供されるものや、ポスターやテレビCMなど、商業的な目的のために制作されるもの、また、グリーティング・カードや絵葉書など、個人的な気持ちや印象を表出/表現するために使用されるものなども含んでいるからです。

「視覚文化」概念の歴史と意義

「視覚文化」という概念は、まだ、『広辞苑』第7版(2018年)には登録されていません。使用され始めてから、それほど時間が経っているわけではないからです。正確に言うのは難しいのですが、この概念が使用され始めたのは、1990年代のはじめです。従来からある「美術史」に対して批判的であった人たちが、「作品」を、それ自体としてではなくて、状況的な要素――注文主/制作者/仲介者/受容者/歴史的・社会的・文化的コンテクスト/コード――が織りなすネットワークのなかで機能する記号=メディアとして理解するために、このような開かれた場を設定したと言っていいでしょう。

参考文献

(1)
ジョン・ウオーカー&サラ・チャップリン『ヴィジュアル・カルチャー入門――美術史を超えるための方法論』岸文和・井面信行・前川修・青山勝・佐藤守弘訳、晃洋書房、2001年
(2)
前川修責任編集「ヴィジュアル・カルチャー・スタディーズ――作品からイメージへ」『美術フォーラム21』第12号、醍醐書房、2005年
(3)
岸文和責任編集「越境する美術史学」『美術フォーラム21』第6号、醍醐書房、2002年