今年度のこれまでのワークショップのキーワードを一つ挙げるなら、「日常」だったのではないでしょうか。たとえば、佐藤研究員が「オルタナティヴ」を主題とした第2回では、この「オルタナティヴ」カルチャーを支えたDIY的な「日常の」メディア(ガリ版+木版画〜DTP)が、「彫刻刀が刻む戦後日本──2つの民衆版画運動」展(町田市立国際版画美術館)を参照しつつ紹介され、はが研究員が「資料」のあり方を問うた第3回では、作品/展示に至る前の、いわば「舞台裏」としてのアーティストの「日常」の活動が紹介され、それぞれ活発な議論が展開されました。この流れを受けて、この第4回では今世紀になって美学の一大潮流をなすに至った「日常美学(everyday aesthetics)」(「日常生活の美学(aesthetics of everyday life)」とも)を取り上げ、その多様なアプローチを類型化してその背景を探ります。しかし、日常美学は「新しい」アプローチなのか、美学が注目する以前から「日常」はさまざまな仕方で考察されてきたのではないか。このような反省に基づき、「日常」をどのように考察するか、そもそも「日常」を考察するとはどういうことか、参加者のみなさんとともに考えたいと思います。